いつもNPO法人イーランチの活動に応援・ご協力をいただき、ありがとうございます。
このたび、NPO法人イーランチは2025年度(2026年3月末)をもちまして、活動を終了させていただくこととなりました。
これまで長きにわたり、多くの皆さまに支えていただきながら歩んでまいりましたが、活動終了に至った経緯を以下にご報告申し上げます。
イーランチは、静岡県焼津市において1998年に任意サークルとして発足し、5年の活動ののち、2003年4月に「地域のIT化支援と女性の社会参加の応援」を目的としてNPOとして活動を始めました。
当時はまだ、女性の社会的役割に対する固定的な見方が根強く、子育て中の母親が社会とつながるための選択肢は多くはありませんでした。一方で、インターネットの普及が急速に進み、職場では学校で習ってこなかったワードやエクセル、インターネットの活用といったITスキルが求められる時代へと移り変わっていました。
そのような背景のもと、私たちは家庭と仕事を両立し、社会的に認知していただけるNPOという活動形態を選択しました。そしてまず自分たち自身が学びながら、同世代の女性たちの再就職や社会参加を支援するためにIT講座をスタートしました。この取り組みは、形を変えながら現在も地域交流センター等でのパソコン講座として継続されています。
やがて、子どもたちが学校でパソコンを学ぶようになり、携帯電話の普及とともに、インターネットの影の側面が社会問題として顕在化してくると、私たちは啓発の必要性を強く感じるようになりました。そこで「インターネットを賢く使える大人を育てよう」という思いのもとに始めたのが、情報モラル講座です。
当時はまだ啓発に必要な情報も担い手も少なく、すべてが手探りの中で、スライドを1枚1枚自分たちで作り上げていったことが、今では懐かしく思い出されます。
私たちは、公的な研究機関でも、医療や教育の専門家でもありません。だからこそ、さまざまな団体や個人の方々との出会い、多くの知見を学ばせていただきました。そしてそこで得た学びを自分たちの中で丁寧に咀嚼し、受講される方々にとって「今、必要なこと」を「わかりやすく伝える」ことが、私たちの役割であり、活動の原点でした。
やがて、講演、講座数は年間180回をかぞえるほどになり、それが後にはネットパトロールという次なる活動へと発展していきました。さらに時代の変化とともに、乳幼児保護者向けのカリキュラムなども制作し、活動の幅を広げてまいりました。
企業や団体、行政、大学等教育機関との連携も進み、焼津市を拠点としながらも、静岡県内全域へ、さらには文部科学省や内閣府の事業にも関わるなど、地方の小さな団体としては得難い経験を積むことができたことは、私たちの誇りです。
緊急雇用創出事業の際には、仲間も増え、これまでできなかったような大きな事業にも挑戦することができました。
このように、これまで仲間同士の絆を深めつつ、楽しく活動を続けてまいりましたが、近年は講演数やパソコン講座の開催回数が減少傾向にあります。これは、ITスキルがもはや特別なものではなく、誰もが一定程度身に付けている時代になったことの表れとも言えるでしょう。またインターネットの安全利用に関する啓発は、GIGAスクール構想をきっかけに学校教育の一環として定着しつつあり、本来あるべき姿へ近づいています。加えて、企業や行政をはじめ、様々な機関が啓発活動を担い、相談窓口も各所に整備されました。その結果、私たちの役割は他の機関で十分に代替可能な段階へと移行しつつあると感じております。
以上のような理由により、イーランチは当初の活動目的は果たせたと判断するに至り、また今後の活動の持続可能性もあわせて検討した結果、今年度をもって活動を終了し、解散することに致しました。
解散というともちろん寂しさもありますが、そこに至るまで、理事会で何度も話し合い、全員の総意で円満に合意し、5月の総会では会員の皆さまからあたたかくご承認いただけたことは、大変ありがたいことです。
いざ解散の準備を始めてみると、法務上の手続き、経理上の処理、事務所の片付けなど、思っていた以上にやるべきことが多くあることに気づかされました。NPOを立ち上げたのは22年前です。当時は夢や希望に満ちており、若さもあって何事にも前向きに取り組めましたが、今は「解散する体力があるうちに」との思いで動き始めております。
これまでの道のりを支えてくださった多くの皆さま、応援し、協力してくださったすべての方々に、心より感謝申し上げます。
尚、当団体は2026年3月末をもって解散するため、来年度の新規ご依頼はお受けできませんが、今年度中はこれまで通り活動を継続いたします。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
NPO法人イーランチ
理事長 松田直子